悪徳商法と消費者被害

現代社会では、手元にある現金での取引だけでなく、クレジットやローンを利用した分割払による取引方法などが広く普及し、様々な商品・サービスを手軽に手に入れることが出来るようになりました。また通信販売やネットショップなど、わざわざ実店舗に出向かなくても購入できるシステムも整備され、消費の機会は格段に増加しました。

しかしその反面、高額な商品や詐欺のようなサービスを提供するさまざまな悪徳商法も増加しており、ある日突然、あなたがその被害者になるかもしれません。

そういった場合でも泣き寝入りをしなくても済むよう、立場の弱い消費者を救済する制度が定められています。今回は、そういった仕組みについて説明していきます。

悪徳商法と特定商取引法

最近は悪徳商法の手口も巧妙になり、その被害は多岐にわたって広がっています。原則的に「契約は自由」であることが前提であり、お互いが納得しての契約であればなんら問題ありませんが、中には契約の内容が不法なもの、公序良俗違反、錯誤による契約、詐欺による契約、脅迫による契約など、消費者側が一方的に不利益を被る契約を交わすケースが発生します。

例えば、「会員になれば海外旅行に安く行ける」などと言葉巧みに電話で呼び出され、指定された場所に行ってみると、実は英会話の教材販売だった、というケースがあります。

こういった手口は「アポイントメント・セールス」と呼ばれる商法で、購入者は英会話のテープ（商品）の販売目的であることを知らされないままに営業所へ行っていることから、特定商取引法でいう「訪問販売」にあたります。

仮にこの契約を解除したい場合はクーリングオフの対象となりますので、クーリングオフが成立すれば、無条件で契約を解除（契約はなかったことになります）出来ます。支払った代金があれば、全額が返金対象です。

ただしクーリングオフができるのは、原則として契約後（契約書面などの法定書面を受け取った日から）８日以内ですのでご注意ください。

※８日以上過ぎていた場合でも、受け取った書面に記載ミス（例えば、「商品の引渡し時期」の記載が漏れているなど）がある場合には、８日以上経っていてもクーリングオフができることもあります。

悪徳商法と消費者契約法

特定商取引法のほかにも、一般消費者を保護する法律として「消費者契約法」が平成１３年４月に施行されています。

消費者契約法においても、特定商取引法と類似の取消権が定められており、

• 不実告知
• 断定的判断の提供
• 不利益事実の不告知
• 不退去
• 監禁

消費者契約法が定める取消権と特定商取引法に定める取消権は、似ていますが要件が若干異なります。実際の主張にあたっては、どちらを使うのかの検討が必要となります。

悪徳商法と民法

民法96条は、詐欺による意思表示の取消権を定めています。一般に詐欺の立証は難しいと言われていますので、まずは特定商取引法や消費者契約法による取消しを検討し、これが認められない場合には、民法96条による取消しを検討する必要があります。

悪徳商法の契約無効

民法95条によれば、法律行為の要素に重大な錯誤があった場合、意思表示は無効とされています。契約締結の意思表示が無効であれば契約は成立しませんので、悪徳な業者に対する支払いの義務は免除されますし、既に支払った金銭は返還してもらうことができます。

悪徳商法の中途解約

連鎖販売取引（マルチ商法）の中途解約

連鎖販売取引とは、簡単に言うとマルチ商法、ネットワークビジネスのことです。 連鎖販売取引におけるクーリングオフ行使期間は法定書面受領日から20日間とされていますが、この期間経過後であっても、消費者は将来に向かって連鎖販売契約を解除することができます。これが連鎖販売取引における中途解約と言われています。

特定継続的役務提供（エステ、学習塾など）の中途解約

特定継続的役務提供とは、エステ、語学教室、学習塾、家庭教師等の在宅学習、パソコン教室、結婚相手紹介サービスのことを言います。連鎖販売取引法と同様、特定継続的役務提供においても中途解約が認められています。

あきらめずに法律相談を

このように、法律は、悪徳商法から一般消費者を救済するためにさまざまな手段を用意していますが、こうしたことを知らないまま、被害を受けてもあきらめてしまう人が少なくありません。

悪徳商法に対しては、決して泣き寝入りしないことが大事です。

ただ、悪徳業者と互角に戦うためには、やはり法律的な知識が不可欠ですので、被害に遭われた場合、速やかに弁護士等の専門家に相談してください。